Sinogi‐Kiriha ブログ
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というだけあって、多分短く複数の話になるのかも?
「こちらが次にやるドラマの脚本と、原作です」
とある芸能人のマネージャーを務める思井金司は、そう言ってその芸能人に薄い冊子と、それなりに厚い小説を手渡す。
一応“芸能人”の部類に入る男・ツキカゲはパラパラと台本のキャスト項目を眺める。
自分の役名を把握すると、今度は原作本を手に取り、どんな人柄かを読み込んでいった。その所要時間は1時間もない。
相変わらず覚えるのが早いなと、金司は感心する。
「今回やるのはこの“山際氷雨(やまぎわひさめ)”っつー奴か」
ツキカゲの口から出た固有名詞に、金司はうなずく。
「山際財閥の次期社長・山際晴耶(せいや)の弟。幼い頃から兄と比べられて育ち、兄に対しコンプレックスを抱き続け、遂には兄を殺害。最後に今まで抑え込んでいた感情を両親と事件の真相を解き明かしたヒーロー&ヒロインに伝え、崖から身を投げて消息不明……で、多少ナレーションが流れてエンドロールってとこか。」
「理解が早くて助かります。が……、ツキカゲとしては初の優男役ですので、仕事をまず請けるかどうかを答えていただきた」
「請ける分には構わねぇよ」
即答な上、自分の予想に反した回答だったのか、思井金司は目を見開いていた。
「何だその顔は」
「え? いや、その……大丈夫ですか?」
「演じる分には一番やりやすいんじゃねぇの?」
普段の自分がやってる事に+αするだけだ。
その言葉は口に出さずに、改めて台本の内容を読み込む。
(こんな役を寄越すたぁ、上の奴)
(――新手の“皮肉”のつもりか?)
数ヶ月後。
『僕は、憎かった』
テレビでそのドラマが放送されていた。
内容は探偵もどきのヒーローとヒロインが、事件を解決していく一話完結型のもので、その話もラスト。山際氷雨(ツキカゲ)が、崖の端に立って、独白していた。
『兄さんの事が妬ましくて、憎くて、仕方なかった。だから、僕は彼を殺したのです。』
『でも、兄さんを殺した後も、僕が満たされることはありませんでした。』
『僕が求めていたものは、手に入らなかったから……』
『父さん、母さん。 僕は』
『僕は……』
『――貴方方に、褒めてもらいたかったんですよ……?』
そう言って氷雨は、崖から飛び降りた。
寂しい笑顔を浮かべて、冷たい、冷たい海の中へ。
ドボン、と音を立てて、沈んでいった
「…………」
「――どんな顔で見てんだよお前は」
そのドラマを見ていたセイリスに、ツキカゲ……もとい高原月読は問う。
彼女は若干悲しげに、彼の方を見た。
「……珍しく、あなた自身の気持ちが入っている印象を覚えたから……」
「……一切アドリブなんか入れてねぇぞ? コレ」
「あなたはそう思っていても、伝わる人には伝わるの。――この役のような気持ちを、ずっと抱き続けていたのね……」
「…………」
月読は彼女の視線を受け止める事無く、彼女の隣に座る。
そんな彼を、セイリスは柔らかく包み込んだ。
温もりに縋るその身体を、小さな手が撫ぜる。
「いつか……あなたの親も、あなたの気持ちに気付いてくれるわ」
「――…」
自分の胸に、何かが伝ったのを感じた。
埋めて見えない彼の目には、きっと涙が浮かんでいるのだろう。
そう解釈して彼女は、彼が落ち着くまで彼の長い髪を撫でた。
それはまるで母子のようだった。
とある芸能人のマネージャーを務める思井金司は、そう言ってその芸能人に薄い冊子と、それなりに厚い小説を手渡す。
一応“芸能人”の部類に入る男・ツキカゲはパラパラと台本のキャスト項目を眺める。
自分の役名を把握すると、今度は原作本を手に取り、どんな人柄かを読み込んでいった。その所要時間は1時間もない。
相変わらず覚えるのが早いなと、金司は感心する。
「今回やるのはこの“山際氷雨(やまぎわひさめ)”っつー奴か」
ツキカゲの口から出た固有名詞に、金司はうなずく。
「山際財閥の次期社長・山際晴耶(せいや)の弟。幼い頃から兄と比べられて育ち、兄に対しコンプレックスを抱き続け、遂には兄を殺害。最後に今まで抑え込んでいた感情を両親と事件の真相を解き明かしたヒーロー&ヒロインに伝え、崖から身を投げて消息不明……で、多少ナレーションが流れてエンドロールってとこか。」
「理解が早くて助かります。が……、ツキカゲとしては初の優男役ですので、仕事をまず請けるかどうかを答えていただきた」
「請ける分には構わねぇよ」
即答な上、自分の予想に反した回答だったのか、思井金司は目を見開いていた。
「何だその顔は」
「え? いや、その……大丈夫ですか?」
「演じる分には一番やりやすいんじゃねぇの?」
普段の自分がやってる事に+αするだけだ。
その言葉は口に出さずに、改めて台本の内容を読み込む。
(こんな役を寄越すたぁ、上の奴)
(――新手の“皮肉”のつもりか?)
数ヶ月後。
『僕は、憎かった』
テレビでそのドラマが放送されていた。
内容は探偵もどきのヒーローとヒロインが、事件を解決していく一話完結型のもので、その話もラスト。山際氷雨(ツキカゲ)が、崖の端に立って、独白していた。
『兄さんの事が妬ましくて、憎くて、仕方なかった。だから、僕は彼を殺したのです。』
『でも、兄さんを殺した後も、僕が満たされることはありませんでした。』
『僕が求めていたものは、手に入らなかったから……』
『父さん、母さん。 僕は』
『僕は……』
『――貴方方に、褒めてもらいたかったんですよ……?』
そう言って氷雨は、崖から飛び降りた。
寂しい笑顔を浮かべて、冷たい、冷たい海の中へ。
ドボン、と音を立てて、沈んでいった
「…………」
「――どんな顔で見てんだよお前は」
そのドラマを見ていたセイリスに、ツキカゲ……もとい高原月読は問う。
彼女は若干悲しげに、彼の方を見た。
「……珍しく、あなた自身の気持ちが入っている印象を覚えたから……」
「……一切アドリブなんか入れてねぇぞ? コレ」
「あなたはそう思っていても、伝わる人には伝わるの。――この役のような気持ちを、ずっと抱き続けていたのね……」
「…………」
月読は彼女の視線を受け止める事無く、彼女の隣に座る。
そんな彼を、セイリスは柔らかく包み込んだ。
温もりに縋るその身体を、小さな手が撫ぜる。
「いつか……あなたの親も、あなたの気持ちに気付いてくれるわ」
「――…」
自分の胸に、何かが伝ったのを感じた。
埋めて見えない彼の目には、きっと涙が浮かんでいるのだろう。
そう解釈して彼女は、彼が落ち着くまで彼の長い髪を撫でた。
それはまるで母子のようだった。
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1990/03/09
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創作とゲームの両立がなかなか
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