Sinogi‐Kiriha ブログ
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タイトルに意味はありませんが、(多分)月読とセイリスの話
とあるビルのとある一室。
50人はゆうに仕事が出来そうなオフィスには、決して人相が良いとはいえない男達が佇んでいる。
肌には所々に傷が、刺青がチラリと覗いており、堅気の企業とは思えぬ空気が周囲に漂う。
黙々と仕事をしながらも、鋭い眼光を放つその双眸は皆、一つの方向を向いていた。
オフィスの片隅にある、仕切りの向こう
仕切りにはうっすらと人影が二つあり、片方は平身低頭、土下座の体勢をとり、もう片方は土下座する者の正面に立ち、見下ろしていた。
「申し訳ございません、頭!」
片方は震える声で正面に立つ者に対し、謝罪する。
「申し訳ございません! 俺の所為で……俺の所為で、しのぎを減らしてしまって!! もう、このようなヘマはしません! 組の名にかけて、誓いますから!! だから……っ!」
まくし立てるように早口で、かすれた声での謝罪。
正面に立つ人物は、そんな謝罪を聞きながら、土下座する者を見下ろしている。
その瞳に感情は、ない。
「…………池上、」
正面に立つ者は口を開け、土下座する者の姓を呼ぶ。
自分の姓を呼ばれ、土下座する者は恐る恐る顔を上げた。
「かし――らっ!?」
土下座をし続けていた池上の視界に映るのは、漆黒の革靴。
池上の顔面に、強烈な蹴りが決まった。
蹴りを繰り出した者の顔に表情はない。
「ぐ ぅ、ぁ……」
「何言ってんだ池上 よぉっ!!」
「がはっ」
悶絶する池上の頭を、正面の者は容赦なく踏みつける。鈍い音がした。
無抵抗の池上の腹を、脇を、背を、腰を、正面の者は続けざまに蹴り始めた。
「素直に謝れば許してくれると、本気で思ってたのかお前? バカじゃねぇの!? そんなので許す訳ねぇだろこのアホがッ! この世界を何だと思ってんだ、あ゛ぁっ!!?」
無抵抗の池上を蹴り続ける者の表情は、先程までの無表情ではなく、明確な怒りの炎が燃え盛っている。
池上の口元には一筋の血液、落ち着いた色合いのスーツも汚れ、除く肌には痣が現れた。
男達は鈍い音と怒号に身を少し震わせながらも、黙々と仕事を続ける。
どのぐらい時間が経過したのかは分からない。
鈍い音も、怒号も消え、ゆったりとした歩調で池上を蹴り続けた――“頭”と呼ばれた――者が仕切りを抜け、オフィスに姿を見せる。
男達は一瞬ざわめくが、頭の眼光に怯み、再び作業を再開した。
「オイお前等ぁ、……先に言っとくぜ?」
頭の口は開く。
気だるそうな口調でありながらも、にじみ出てくるプレッシャーに屈強な男達は容易に気圧された。
「くれぐれも」
仕切りの陰から僅かに何かが確認できた。
それは 腕
力なく、だらりと垂れた池上の、腕。
その肌に生気などは窺えられなかった。
「くれぐれ、も」
頭は言う。
前髪の半分を片手で掻き揚げながら言う。
「池上のようなヘマは、するんじゃねぇぞ……?」
『池上のようなヘマは、するんじゃねぇぞ……?』
教師・セイリスは何とも言えない表情を浮かべながら放送されているドラマの画面を見つめる。
「――ねぇ、月読…」
「何だ? セイリス」
セイリスは台所で食器の片付けをする同居人の名を呼ぶ。
月読と呼ばれた同居人は、テレビに映る頭と同じ声で彼女の名を呼び返す。
というか、その月読と呼ばれた同居人は、格好は違えど、今放送されているドラマに登場した頭と同じ髪と目の色・顔立ちをしているのである。
頭役の俳優の名がエンドロールに流れていく。
“ツキカゲ”
今、彼女の傍らで食器の片付けをしているこの同居人こそ、正真正銘本人なのである。
その事実を知る数少ない存在でもある彼女は、問うた。
「前から思ったんだけど、あぁいう演技をするのって疲れないの? 人を蹴ってるけど……辛くはならないの?」
「いぃや? 別に何ともないね」
即答である。
何となく答えが予想出来ていたのか、彼女は別に驚きもしなかった。
「俺が演技なんてやってるのは日常茶飯事になってるしなぁ……つーか寧ろ、あっちの演技の方が気が楽で良いわ。」
「丁寧口調で紳士な優男を演じる方がよほどか面倒臭いよ」と付け加えながら、片付けを終えた月読は彼女の隣に座り込む。
セイリスは何となく彼に寄り添う。
月読は感情のない瞳でテレビを眺める。
(丁寧口調で、紳士な優男を演じ続ける か…)
自分が普段“演じている”己の姿を思い出しながら
己が“演じた”姿に対して、親は何を感じていたか
何も感じていなかったという事実に対し、嘲笑を浮かべながら思う。
(――“良い子”なんて演じても、意味がないのに)
(何で今も未だ“良い子”を演じてるんだろうな)
(……やっぱり、未だ “俺”は――――――)
50人はゆうに仕事が出来そうなオフィスには、決して人相が良いとはいえない男達が佇んでいる。
肌には所々に傷が、刺青がチラリと覗いており、堅気の企業とは思えぬ空気が周囲に漂う。
黙々と仕事をしながらも、鋭い眼光を放つその双眸は皆、一つの方向を向いていた。
オフィスの片隅にある、仕切りの向こう
仕切りにはうっすらと人影が二つあり、片方は平身低頭、土下座の体勢をとり、もう片方は土下座する者の正面に立ち、見下ろしていた。
「申し訳ございません、頭!」
片方は震える声で正面に立つ者に対し、謝罪する。
「申し訳ございません! 俺の所為で……俺の所為で、しのぎを減らしてしまって!! もう、このようなヘマはしません! 組の名にかけて、誓いますから!! だから……っ!」
まくし立てるように早口で、かすれた声での謝罪。
正面に立つ人物は、そんな謝罪を聞きながら、土下座する者を見下ろしている。
その瞳に感情は、ない。
「…………池上、」
正面に立つ者は口を開け、土下座する者の姓を呼ぶ。
自分の姓を呼ばれ、土下座する者は恐る恐る顔を上げた。
「かし――らっ!?」
土下座をし続けていた池上の視界に映るのは、漆黒の革靴。
池上の顔面に、強烈な蹴りが決まった。
蹴りを繰り出した者の顔に表情はない。
「ぐ ぅ、ぁ……」
「何言ってんだ池上 よぉっ!!」
「がはっ」
悶絶する池上の頭を、正面の者は容赦なく踏みつける。鈍い音がした。
無抵抗の池上の腹を、脇を、背を、腰を、正面の者は続けざまに蹴り始めた。
「素直に謝れば許してくれると、本気で思ってたのかお前? バカじゃねぇの!? そんなので許す訳ねぇだろこのアホがッ! この世界を何だと思ってんだ、あ゛ぁっ!!?」
無抵抗の池上を蹴り続ける者の表情は、先程までの無表情ではなく、明確な怒りの炎が燃え盛っている。
池上の口元には一筋の血液、落ち着いた色合いのスーツも汚れ、除く肌には痣が現れた。
男達は鈍い音と怒号に身を少し震わせながらも、黙々と仕事を続ける。
どのぐらい時間が経過したのかは分からない。
鈍い音も、怒号も消え、ゆったりとした歩調で池上を蹴り続けた――“頭”と呼ばれた――者が仕切りを抜け、オフィスに姿を見せる。
男達は一瞬ざわめくが、頭の眼光に怯み、再び作業を再開した。
「オイお前等ぁ、……先に言っとくぜ?」
頭の口は開く。
気だるそうな口調でありながらも、にじみ出てくるプレッシャーに屈強な男達は容易に気圧された。
「くれぐれも」
仕切りの陰から僅かに何かが確認できた。
それは 腕
力なく、だらりと垂れた池上の、腕。
その肌に生気などは窺えられなかった。
「くれぐれ、も」
頭は言う。
前髪の半分を片手で掻き揚げながら言う。
「池上のようなヘマは、するんじゃねぇぞ……?」
『池上のようなヘマは、するんじゃねぇぞ……?』
教師・セイリスは何とも言えない表情を浮かべながら放送されているドラマの画面を見つめる。
「――ねぇ、月読…」
「何だ? セイリス」
セイリスは台所で食器の片付けをする同居人の名を呼ぶ。
月読と呼ばれた同居人は、テレビに映る頭と同じ声で彼女の名を呼び返す。
というか、その月読と呼ばれた同居人は、格好は違えど、今放送されているドラマに登場した頭と同じ髪と目の色・顔立ちをしているのである。
頭役の俳優の名がエンドロールに流れていく。
“ツキカゲ”
今、彼女の傍らで食器の片付けをしているこの同居人こそ、正真正銘本人なのである。
その事実を知る数少ない存在でもある彼女は、問うた。
「前から思ったんだけど、あぁいう演技をするのって疲れないの? 人を蹴ってるけど……辛くはならないの?」
「いぃや? 別に何ともないね」
即答である。
何となく答えが予想出来ていたのか、彼女は別に驚きもしなかった。
「俺が演技なんてやってるのは日常茶飯事になってるしなぁ……つーか寧ろ、あっちの演技の方が気が楽で良いわ。」
「丁寧口調で紳士な優男を演じる方がよほどか面倒臭いよ」と付け加えながら、片付けを終えた月読は彼女の隣に座り込む。
セイリスは何となく彼に寄り添う。
月読は感情のない瞳でテレビを眺める。
(丁寧口調で、紳士な優男を演じ続ける か…)
自分が普段“演じている”己の姿を思い出しながら
己が“演じた”姿に対して、親は何を感じていたか
何も感じていなかったという事実に対し、嘲笑を浮かべながら思う。
(――“良い子”なんて演じても、意味がないのに)
(何で今も未だ“良い子”を演じてるんだろうな)
(……やっぱり、未だ “俺”は――――――)
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